セカイ系というのは曖昧な括りで、逆にそれゆえに様々な論者が自分の価値観、時代感、作品感を載せて語ることが出来たのだと思います。
そのため論者によってセカイ系の定義は違いますが、セカイ系という言葉のイメージは定義以前からある程度共有されてもいるわけです。
それはおそらく、セカイ系的な要素と見做されるものがあって、そうした要素を多く含んでいるものをセカイ系作品と感じるという程度のものでしょう。したがってセカイ系っぽいと思われている2つの作品を比較してみると、共通する特徴は意外と少ないということも起こります。
ひょっとしたら「セカイ系作品であれば必ず備えている特徴」というのはまったく存在しないかもしれません。
単純化したモデルで考えると、セカイ系的な特徴としてA、B、Cの3要素があり、作品Xは特徴AとBを持つところからセカイ系と言われ、作品Yは特徴BとCを有することから、作品Zは特徴CとAを理由にセカイ系と呼ばれているという状況も考えられます。この場合、作品X、Y、Zの3者のすべてに共通して備わっている特徴は存在しません。家族的類似という言葉を思い出してもいいでしょう。
と言う訳で、セカイ系的特徴をお遊びでリストアップしてみました。
整然としたリストにはなっていません。むしろ無理矢理25項目にしてあるので、ビンゴでもやって遊んでみてください。
自分で作成しておいてなんですが、セカイ系のイメージが古い、あるいは狭いかもしれないという意識はあります。なんなら項目を追加したり置き換えたりすればいいと思います。
実際、セカイ系作品はそのように変化ないし拡散していったとも考えられます。
つまりセカイ系というのはある時点での「ウケそうな要素の束」であったのが、鼻に付くようになった要素は外され、新しい流行要素が付け加えられることで変質していった、と。
なおリストは主人公が男である前提で作られていますが、そこにこだわる意図はありませんので、この前提は無視でもよいかも。ただ、セカイ系といったとき主人公=男の傾向は強い気はしますので、前提から外す代わりに項目の一つに落としてもよかったかもしれません。
まあ、その辺りは適当に。
◆セカイ系ビンゴ1. モノローグの多用
2. 正体のよくわからない敵が攻撃してくるが、その欲望や敵意など人間的動機は示されない
3. 電柱と電線、アスファルトの道路、線路や踏切など日本の日常的な風景が印象的に挿入される
4. 主人公やヒロインに記憶や意識の障害が生じる
5. 社会や国家、国際関係などはほとんど描かれない
6. 主人公は普段はあまり目立たないタイプで、彼女いない歴=年齢
7. 主人公はセカイを救うか、彼女を救うかの選択を迫られる
8. 主人公は(しばしばヒロインを連れて)逃避行に出るが、失敗する
9. 舞台は現代の日本、あるいは日常生活の感覚は現代とほとんど変わらない近未来の日本
10. 主人公と対等に近い友人・ライバル、弱い立場の年少者などは登場しない、あるいは物語が深刻さを増していくと出番がなくなる
11. SF的なガジェットは登場しても理論的裏付けは薄く、ミステリー的外観をとっていても推理ものとしてのルールは守っていない
12. ヒロインは傑出した技能や特異な能力を持つが、主人公の能力は常識的な範囲に留まる
13. 主人公・ヒロインは十代の少年少女
14. 主人公の周りには魅力的な若い女たちが複数登場するが、ヒロインの気を惹くような若い男は登場しない
15. 盛んに鳴く蝉・弱って死んだ蝉、夏の雲の描写
16. 主人公やヒロインの自己批判や罪悪感が、その行動を大きく左右する
17. ヒロインは重傷を負い、あるいは死亡する
18. メタフィクション的な言及、あるいは過去の作品からの積極的な引用が認められる
19. ヒロインはセカイの危機に決定的な影響を与えることができる
20. 冷酷な、あるいは冷酷に振る舞わざるをえない、大人たち
21. セカイは滅亡の瀬戸際にある、あるいは実際に滅亡的状況まで進行する
22. 主人公の内面の対話が、白昼夢や幻覚のごときシーンとして描かれる
23. 国家的、あるいは超国家的レベルの秘密計画が、一般国民には知らされないまま進行している
24. 人のいない教室、黒板などのイメージが挿入される
25. ハッピーエンドではないが、痛みを抱えながらそれでもこのセカイで生きていくという前向きさを含んだ結末
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いまさらセカイ系を考える 其の二いまさら日常系を考える